Q&A for Lab choice

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研究室を選ぶ前に

 研究室選びは大学選びと同じくらいかそれ以上に大切だと考えています.今後の人生を大きく左右するイベントといっても過言ではありません.研究室には短くて1年,修士課程に進学する場合3年,在籍することになります.自分の考え方やスタイルと合わない環境に3年間も居続けるのことは不幸です.自分と向き合い,将来の夢やキャリアプラン,価値観,ライフプラン等について考えてみましょう.
 研究生活に期待することは学生によって様々だと思います.例えば,

  • 趣味など自分の時間を充実させながら卒論・修論をなんとか完成させたい,
  • 他の大学院に行くための大学院入試を控え,研究はそこそこで良いと考えている,
  • これまでの「勉強」とは異なる「研究」という活動についての自分自身の潜在的能力や適正を判断して今後の進路を見極めたい,
  • 過酷な環境に自分を追い込んで自分の力や価値を高めたい,
  • 博士課程への進学を考えている,

など様々です.自分自身の研究(生活)のゴールを良く見極めてください.

Q: まずは何から始めれば良いでしょうか?

A: 公開情報を念入りに調べてみましょう.

 まずは研究室の情報を調べてみましょう.研究室のWebページや教員の活動Webページ,研究業績,卒業生の就職先情報などが参考になると思います.研究内容のページや研究業績のページから,これまでどのような研究が行われていて現在どのような研究がホットなのかを大まかに知ることができます.また研究室メンバーのリストから,各学年でどのような学会活動をどの程度行っているのかの確認も可能です.ただ,研究内容や採録されている国際学会や論文誌などについては,専門家では無い学生の皆さんには判断が難しいところかと思います.沢山の学会発表件数がある場合でも,実はそれらは査読(審査)が無いに等しい,どのような論文でも採択するような学会かもしれません.そのような時は,(いろいろな意見はありますが)一つの指標として以下のような複数の情報が頼りになると思います.

 このような情報と研究室の公開情報を突き合わせることは,研究室研究活動の調査の第一歩となるはずです.さらに,著者リストと研究室メンバーを照らし合わせたり論文の著者所属情報を見ると,その研究室のメンバーが研究した成果なのか,共同研究グループが中心となって研究した成果なのか,が分かると思います.これ以外にも,どのような研究設備があるかも確認することができるかもしれません.公開されている情報を念入りに調べると色々なことが分かると思います.
 ただ,Webページ等で公開されている情報は量・質ともに十分ではありません.またそれらは極めて表面的な情報です.さらに注意すべきことは,上記のような情報,例えば論文のランクやその論文数だけで研究室を判断するのは大変危険です.特に,研究に“初めて”たずさわることになる学生さんにとっては,このような目に見える情報より重要なことがあるかもしれません.

Q: 何を重視して決めた方が良いでしょうか?

A: (誤解を恐れずに言えば)1. 教員(人柄,研究への考え方,学生に期待する内容,学生との距離間,相性),2. 指導・研究方法,でしょうか?

 Webページ等からでは分かりにくい情報として「指導・教育方法」が挙げられます.これはとても重要です.定期的な全体ゼミを主体に進めるのか,グループゼミを主体に進めるのか,ゼミの主導者は教員なのか,それとも上級生の大学院の学生なのか,学生との1対1でのディスカッションを主体に進めるのか,などが重要な要素です.研究指導体制が,教員を中心としたスター型なのか,教員→助教(研究員,ポスドク)→博士・修士学生→学部学生といった階層型なのか,も重要です.実は教員とは一年に二,三回のゼミでしか研究の話をすることが無い,という研究室もあります.これらは,研究室の規模や各学年の構成にも依るところが大きいと思います.いずれにしても,研究室の学生に質問すればすぐに分かる情報です.ただ重要なことは,どちらが良いということはないということも心に留めておくべきことです.

「研究テーマの設定手法」も重要です.前述の指導・教育方法とリンクしますが,研究室で過去から培ってきたテーマを引き継ぐのか,現在研究室の学生が進めているテーマの一部を割り振ってもらうのか,既に形成されている研究プロジェクトの一員として加わるのか,関連する分野の中から自分の裁量でゼロからテーマを見つけるのか,先生が現在興味を持っているテーマや論文などの下調べからテーマを探っていく等,様々です.一つの研究室の中でも混在しているケースがほとんどだと思いますが大まかな傾向はあると思います.こちらも研究室の学生に質問してみるのが良いでしょう.
 そして最も重要なことは,指導者となる「教員」だと思います.指導教員とは長い付き合いになるので,ウマが合わない教員の研究室を選んでしまうと後悔することになります.教員との相性は個人差があるので,自分自身にしか分からないことがあります.Webページや講義の様子や噂だけで判断することは危険です.先入観を捨てて指導教員と一対一で話してみてください.教員の人柄や考え方を少し垣間見ることができると思います.
 同じようなポイントになりますが,教員が「学生に期待すること」また「研究生活で大事してほしいこと」,「学生に必ず守って欲しいこと」を配属前に知ることも重要だと思います.これらは,研究そのものとポイントが違うところにあるかもしれません.これを知らずに研究室に入ってしまうと,将来の問題の火種になる可能性が高く,不幸な結果になりかねません.ですが,残念ながら明文化されないのが一般的かと思います.これを知る一つの方法としては,教員以外の研究室の学生に,普段の教員の人柄や研究スタイル,指導スタイル,あるいは趣味等について尋ねてみることでしょうか.学生目線での情報を得ることができると思います.お勧めの方法ですので,活用してみてください.(笠井の考え方については,できるだけ書くようにしました.こちらをご覧ください.)
 いずれにしても,研究室を複数回訪問して教員や研究室の学生を良く観察してみてください.

Q: 研究テーマは重要では無いということでしょうか?

A: 重要だと思いますが最も重要な要素ではないかもしれません.

 研究テーマはもちろん重要です.モティベーションを左右し,その成果にまで及ぶからです.ですが,これは

 ”二の次で良い”

のかもしれません.卒業して進学する場合でも,企業に就職する場合でも,学部・修士の学生の時と全く同じ研究テーマで研究や業務に携わる可能性は高くないと思います.また,研究のトピックはどんどん進化して行きます(*).研究室で研究する多くの学生にとって大学の研究室で研究活動として取り組む目的は,その分野の最先端の研究論文を書くことやその分野の研究者になることだけに限りません.勿論,それらは目的の一つかもしれませんが,様々な情報を整理しながら理論的な手法を身に付け理論的な考え方を養い,新たな問題を見つけ,その問題に対して自ら或いは仲間と協力して取り組んでいく力を身に付けることだと思います.そして,今後の科学技術分野の発展に工学者・技術者として寄与すること,あるいはそれ以外の分野で世界をリードしていくことに生かしていくことだと思います.研究テーマは,その訓練のための「ケーススタディ」の題材や手段の一つと考えたほうが良いと思います.情報通信・コンピュータサイエンスの分野は,皆さんが知っているよりずっとずっと多彩で魅力的な研究テーマで溢れています.どのテーマを選んでも,研究室でそれらにしっかり取り組めば,今後の人生に良い影響を与えることでしょう.
 ですので,むしろ研究室選びは,研究室のスタイルや研究環境,教員の人柄や教員との相性を重視したほうが良いと思います.自分の興味ある分野の視野を少し広げて,自分に合う研究室を探すのが良いと思います.
 繰り返しになりますが,研究室をまわって教員や学生と話をすることをお勧めします.

(*)ここでは「研究室の研究に意味が無い」と言っている訳ではありません.重要なことは,実際に取り組む研究テーマを通して,将来行う研究や開発,あるいはそれとは異なる業務・業種・業態においても通用する真の基礎力を身につけることが大切と考えています.

Q: 他に情報を得る手段はありますか?

A: プロジェクト研究の科目履修制度を利用することをお勧めします.

 基幹理工学部 情報理工学科・情報通信学科の学生でしたら,研究室に本配属する前の3年時に,研究室での研究活動の体験ができるプロジェクト研究の制度があります.ぜひ活用してください.
 詳細については,こちらをご覧ください.

Q: 笠井研究室に入るためには,どのような知識や能力を身につけておくと良いですか?

A: 大学3年生までに学ぶ大学教養課程の数学,特に線形代数及び微分積分,ある程度の英文を読む能力,一つ以上のプログラミグ言語による実装スキル,を身につけておくことと良いです.

  • 数学,特に,線形代数,微分積分,確率・統計については,教養課程で学んだ内容が必要です.
  • 研究を進めるためには,沢山の英語の論文を読むことが必要となりますので,一定程度の長さ・品質の英文が「ある程度」読めることが望ましいです.
  • プログラミグ言語(Python/MATLAB/R/C/C++等のいずれか一つ以上)による実装スキルを身につけておくことが望ましいです.
  • ドキュメント,特に発表原稿,学会論文,スライド等の作成ではLaTeXをメインで使用しますので,使い慣れておくと良いと思います.

ただ,いずれも研究室に入ってから指導・訓練しますので,配属前に完全に身につけていなくても問題ありません.研究で使用する数学については数学ゼミを通してまた論文調査を通して身に付けていきます.また,例えば複数手法の性能比較のため,ある言語で書かれたある手法のソースコードを他の言語へ移植する作業も頻繁に発生しますので,研究室では複数プログラミング言語の実装スキルが自然と身に付きます.

Q: どのような学生が合っていますか?

A: 一言で整理することは難しいのですが,例えば...

  • どの研究室にも共通していると思いますが,研究を進めるには「自主性・自律性」が重要です.また「自己管理力」も必要となります.そのような能力を持っている学生は,問題なく研究を進めていけると思います.
  • 上記に加えて「例えば」ですが,以下のような学生にあっていると思います.
    • 数学,特に,線形代数,微分積分,幾何が得意,好きな学生
    • 計算機が苦手で,鉛筆とノートだけで研究を進めたい学生
    • 証明を書きたい学生,証明を読むことが好きな学生
    • 数値計算・解析シミュレーションが好きな学生
    • 実験結果のデータを眺めるのが好きな学生
    • アルゴリズムを考えることが好きな学生
    • 固有値(計算)が好きな学生
    • 行列(計算)が好きな学生
    • 空間が好きな学生
    • 統計が好きな学生
    • 最適化や機械学習に関わるアルゴリズムのソフトウェア開発・オープンソース化に興味がある学生
  • 一方,以下のような学生には,合っていないかもしれません
    • モノ作り(アプリケーション/ハードウェア/システム設計・開発)を精力的に進めたい学生

Q: 研究室では何を身につけることができますか?

A: エンジニアにとって必要な数学的基礎力,機械学習や最適化,データ解析に必要な基礎知識,それらを扱うためのプログラミング能力が身につくと思います.

 研究するテーマにより異なりますし,また大学の学部・大学院で自身が深く掘り下げて取り組む研究テーマは決して広くはありません.ですので,上記に述べた幅広い分野の専門知識やスキルを数年で習得することは難しいと思います.しかしながら,自分の研究テーマに密接に関わる技術,手法,理論,またそれに必要な数学的知識,またコンピュータ・シミュレーションによる評価実験のためのプログラミング能力は,一通り身につくはずです.
 また,研究室内で実施する複数のゼミを通して,自身の研究テーマに限らない幅広い知識を得ることできると思います.「たしか,○○○については大学の研究室のゼミで聞いたことがあるなあ・・・」ということが,社会に入ってから重要だったりします.それを期待しています.

Q: 具体的な研究テーマについて教えてください.

A: 機械学習・最適化・データ処理に関わるアルゴリズムの考案と開発,またそれらの数値シミュレーションや理論的アプローチによる評価を行います.

 具体的にはこちらをご覧ください.